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介護施設で働く多くの方が、日々の業務を通じて人間関係のストレスを感じています。介護職は、身体的・精神的に負担が大きく、チーム内でのコミュニケーションが円滑にいかないと、ストレスがさらに増大します。特に、意見の対立が起こる場面では、職場の雰囲気が一気に悪化し、業務効率も低下してしまいます。
意見の対立は避けられないことですが、それを適切に管理し、組織全体の発展に繋げることができれば、職場環境の改善や業務効率の向上が期待できます。ここでは、介護職が職場で意見の対立に直面した際、どのように対処すべきかについて解説します。
【記事監修者】
堀池和将
~経歴~
特別養護老人ホーム勤務(ユニットリーダー)
サービス付き高齢者住宅勤務(サービス提供責任者・訪問介護管理者・施設長)
~保有資格~
介護福祉士
介護職の人間関係のストレスに悩む方へ
介護施設で働いていて、「一番つらいのは人間関係のストレス」と感じたことはありませんか?
仕事の内容も大変ですが、同僚や他の職種とのコミュニケーションの難しさに頭を悩ませる方も多いでしょう。
なぜ介護施設では人間関係が悪化するのか?
その理由は、「介護の仕事において、正解が曖昧であるために、正解の取り合いが起きるから」です。これが、介護施設での人間関係が悪化する根本的な原因です。
介護施設で人間関係がストレスとなる原因
介護施設には、介護士や看護師、ケアマネジャー、リハビリ専門職など、多くの職種が関わっています。同じ介護職の中でも、年齢や経験、バックグラウンドが異なるため、意見の相違が生じやすいのです。また、一般企業のような人事異動が少ないため、同じ人と長期間働き続けることが多く、それがさらにストレスの原因となります。
忙しいから=人間関係の悪化といった考え方は間違い
インターネット上では、「業務が多すぎて相手を思いやる余裕がない」などといった声もあります。しかし、本質的な原因はそこではありません。チームでプロジェクトを進める仕事は他の業界にも多く存在し、業務過多は介護業界に限ったことではないからです。
正解の曖昧さが人間関係を悪化させる
介護施設での人間関係の問題は、「正解が曖昧ゆえに、正解の取り合いが起きること」にあります。介護の現場では、絶対的な正解が存在しないことが多く、そのため、誰が正しいかを巡って対立が生じやすいのです。
特に、権力を持つ人が発言する「正解」は、周囲にとって絶対のように見えることがあります。しかし、実際には別の選択肢も正解であることが多いのです。このような状況が続くと、介護職員の間で摩擦が生じ、「人間関係がしんどい」と感じるようになります。
具体例:介護現場での「正解の取り合い」
たとえば、ある介護士が「賢い介護士は無駄に声をかけず、見守ることも大事」とSNSで発言したとします。多くのフォロワーを持つこの介護士は、発言に影響力があり、多くの人がそれを「正解」として受け入れます。しかし、声掛けの重要性は、利用者の状態や状況によって変わるため、一概に「正解」とは言えないのです。
このように、現場では異なる「正解」がぶつかり合い、結果として人間関係が悪化することがあります。
介護施設での人間関係の改善に向けて
介護職員間での摩擦や対立は、正解の曖昧さから生まれることが多いです。異なるバックグラウンドを持つ人々が集まり、異なる視点から物事を見ているため、正解が一つに定まらないのです。そのため、正解を巡る争いが生じやすくなり、人間関係が悪化するのです。
しかし、もし全ての職員が同じ正解を共有できれば、仕事においてはより協力しやすくなるかもしれません。仕事において全ての正解が一致することで、職場の雰囲気は改善されるでしょう。
しかし、それは現実問題難しいところ。そこで別の解決策が必要になってきます。
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コンフリクトマネジメントの理解
意見の対立、すなわち「コンフリクト」は、介護施設においても頻繁に発生します。対立が起こると、職場の空気が悪化し、業務が滞ることもありますが、適切に管理すれば、対立は組織の成長を促進する要素となります。これを「コンフリクトマネジメント」と呼びます。対立を避けるのではなく、うまく利用して双方に利益をもたらし、組織全体をより良い方向へ導く考え方です。
コンフリクトマネジメントのメリット
コンフリクトマネジメントを取り入れることで、以下のようなメリットがあります。
意見交換の活性化
職員が自由に意見を述べられる環境が整うため、職場の風通しが良くなり、創造性やチームワークが向上します。
問題解決能力の向上
対立を恐れず、解決に向けて積極的に取り組むことで、組織全体の問題解決能力が高まります。
信頼関係の強化
対立を乗り越え、共に問題を解決することで、職員同士の信頼関係が強化され、職場の一体感が生まれます。
コンフリクトを解決する5つのステップ
介護職が職場で意見の対立に直面した際、以下の5つのステップを踏むことで、対立を建設的に解決することができます。
迅速な対応
対立が発生したら、放置せずに早期に対処することが重要です。対応が遅れると、職場全体の雰囲気が悪化し、信頼関係の崩壊やストレスの増大を招きます。
オープンなコミュニケーション
対立の背景には、誤解やコミュニケーション不足が原因となっていることが多いです。対立している双方が冷静に話し合い、それぞれの視点や意見を尊重しながら解決策を見つけるためのコミュニケーションを促進しましょう。
仲介者の介入
場合によっては、第三者の仲介が必要です。介護リーダーや管理職が仲介役となり、双方の意見を客観的に整理し、建設的な対話を促すことが求められます。
解決策の検討
双方の意見を尊重しつつ、全ての可能な解決策を検討します。この際、創造的なアイデアが生まれることもあります。重要なのは、双方が納得できる解決策を見つけることです。
解決策の実行とフォローアップ
合意に達した解決策を実行し、その効果を確認します。必要に応じて、再調整やフォローアップを行い、問題が再発しないようにします。
必要なスキル
コンフリクトマネジメントを効果的に行うためには、以下のスキルが必要です。
コミュニケーションスキル
コンフリクトマネジメントの中核となるのが、優れたコミュニケーションスキルです。対立を解消するためには、双方の意見や感情を正確に理解し、適切に伝達する能力が不可欠です。話し手が伝えたいメッセージとその伝え方を的確に把握し、相手の受け取り方を考慮しながら調整することで、誤解や感情的な対立を回避できます。
コミュニケーションスキルには、以下の要素が含まれます。
効果的なヒアリング
双方の意見を深く掘り下げて聞くことで、表面的な問題ではなく根本的な課題を明らかにします。これにより、適切な解決策を導き出すことが可能となります。
適切な言葉遣いと話し
言葉の選び方やトーン、ボディランゲージは、対立の解消に大きく影響します。柔軟で配慮に満ちた話し方を用いることで、相手に安心感を与え、建設的な対話を促します。
共感的理解
相手の立場に立って考えることができる能力も重要です。相手が何を感じ、何を求めているのかを理解し、それを適切に反映させた対話を行うことが、信頼関係の構築に繋がります。
エモーショナルインテリジェンス(EI)
エモーショナルインテリジェンスとは、自分と他者の感情を認識し、それを適切に管理・処理する能力を指します。コンフリクトマネジメントにおいては、対立が感情的にエスカレートすることを防ぐため、エモーショナルインテリジェンスが極めて重要です。
エモーショナルインテリジェンスを高めることで、以下の効果が期待できます。
自己管理
自分の感情を冷静に保つことで、感情に流されずに理性的な判断を下すことができます。特に、対立が激化した状況では、仲介者自身の感情管理が鍵となります。
他者の感情理解
相手の感情を的確に読み取り、それに対して共感を示すことで、相手が感じるストレスや不安を軽減することができます。これにより、より柔軟で受容的な対話が可能となります。
ポジティブな影響力
エモーショナルインテリジェンスを活用して、対話の場をポジティブな方向に導くことができます。冷静かつ共感的な対応を通じて、対立が解決に向かうよう相手を導くことができるでしょう。
創造的思考力
コンフリクトマネジメントでは、従来の解決策だけでなく、新しいアプローチを考え出す創造的思考力も重要です。固定観念にとらわれず、双方が納得できる新しい解決策を見出すためには、柔軟な発想と問題解決能力が求められます。創造的な思考を持つことで、従来の対立構造を打破し、全員が満足する結果を得られる可能性が高まります。
まとめ
介護職の職場で意見の対立が起こるのは避けられないことですが、それを恐れる必要はありません。コンフリクトマネジメントを実践することで、対立を組織の成長の機会に変えることができます。適切なスキルと方法を駆使して、対立を乗り越え、より良い職場環境を築いていきましょう。