介護職は、そのやりがいのある仕事で知られる一方、メンタルヘルスに多大な影響を与える可能性がある職種でもあります。
実は介護職がうつ病などの労災請求件数で全業種の中でトップに立つという事実をご存じですか?
今回はその背後にある原因について、詳細に探っていきます。
また、記事の後半では、これらの問題に対処するための方法やリソースについても触れていきます。
【記事監修者】
堀池和将
~経歴~
特別養護老人ホーム勤務(ユニットリーダー)
サービス付き高齢者住宅勤務(サービス提供責任者・訪問介護管理者・施設長)
~保有資格~
介護福祉士
介護職|職場の人間関係とストレス
職場の人間関係がメンタルに与える影響
介護の現場では、同僚や上司との関係が仕事の進行や個人のストレスレベルに大きな影響を与えます。
以下のような具体的な問題が発生しやすい環境です
ミスとその影響
介護職は他の職員や利用者に直接影響を与えることが多く、ミスがあった際に他の職員に迷惑をかけることがあります。
これが、嫌な態度や指摘を引き起こし、自己評価を低下させる要因になります。
介護方法や方針の不一致
介護施設では、各職員が異なる介護方法や方針を持っていることがあり、これが職場内での摩擦やすれ違いを生むことがあります。
介護施設の閉鎖的環境とその影響
介護施設はその性質上、外部との接触が少ない閉鎖的な環境であることが多いです。
この閉鎖的な環境は、いじめやパワーハラスメントを助長しやすく、職員間の緊張を高める要因となります。
いじめやパワーハラスメント
閉鎖的な職場環境では、特定の職員が標的にされるリスクが高まります。
これにより、被害を受けた職員のメンタルヘルスに重大な影響を与えることがあります。
サポート不足
外部からのサポートが少ないため、職員は自分たちだけで問題を解決しなければならないことが多く、これがストレスを増加させる要因となります。
給料に反映されにくい介護の仕事の評価
介護職の評価の難しさ
介護職は、営業職のように成果を数値化するのが難しい職種です。
そのため、職員がどれだけ努力しても、その成果が適切に評価されないことがあります。
経験年数と保有資格の重視
多くの介護施設では、給料が経験年数や保有資格に基づいて決まることが多く、実際のパフォーマンスが反映されにくいです。
報われない努力
職員がどれだけ利用者に寄り添ったケアを提供しても、その努力が給料や評価に反映されないことが多々あります。
これが、職員のモチベーションを低下させ、メンタルヘルスに悪影響を与える要因となります。
適切な評価が欠如することの影響
介護職の本質は、利用者に寄り添ったケアを提供することですが、これが評価に直結しない場合、職員は虚しさやフラストレーションを感じることがあります。
評価の不透明さ
努力が認められず、評価が不透明な場合、職員は自分の仕事に対して疑問を抱くことが多くなります。
精神的な消耗
適切な評価が欠如すると、職員は精神的に消耗しやすくなり、長期的にはうつ病やバーンアウトに繋がるリスクが高まります。
人手不足による仕事量の増加
介護業界の慢性的な人手不足
日本の介護現場では、慢性的な人手不足が続いています。
これにより、職員一人当たりの仕事量が増加し、メンタルヘルスに多大な負担をかけています。
高齢者の増加
高齢者の人口が増加しているため、介護サービスの需要が拡大しており、これが人手不足に拍車をかけています。
離職率の高さ
過度な仕事量が原因で、職員が離職することが多く、これがさらに人手不足を悪化させる要因となっています。
人手不足がもたらす負担
職員が過剰な仕事量に対処しなければならない場合、以下のような問題が発生します
残った職員への負担の増加
離職した職員の仕事を残った職員がカバーすることになり、彼らの負担がさらに増加します。
責任の重さ
介護職は人の命を預かる責任があり、この重責が精神的なストレスを引き起こす要因となります。
介護職|体力的な負担とメンタルヘルスへの影響
介護業務の体力的な負担
介護の現場では、利用者を持ち上げたり、支えたりする力仕事が多く、これが職員の体力に大きな負担をかけます。
力仕事の多さ
日常的に重労働が要求されるため、体力の消耗が激しくなります。
夜勤の影響
入所系の施設では夜勤があり、生活リズムが乱れやすく、これがメンタルヘルスに悪影響を与える要因となります。
体力的負担とメンタルヘルス
体力的な負担がメンタルヘルスにどのように影響を与えるのかについても考えてみましょう。
身体的な疲労と精神的な疲労
身体的な疲労は、精神的な疲労を引き起こしやすく、これが長期的なストレスに繋がることがあります。
生活リズムの乱れ
夜勤などで生活リズムが乱れると、睡眠不足や不規則な生活が続き、これがメンタルヘルスに悪影響を与えることが多いです。
介護の仕事における利用者やその家族とのコミュニケーション
認知症患者とのコミュニケーションの難しさ
介護の現場では、認知症を患う利用者とのコミュニケーションが特に難しいことが多いです。
暴言や暴力
認知症の影響で、利用者が暴言や暴力を振るうことがあり、これが職員にとって大きなストレスとなります。
介護拒否
忙しい中での介護拒否は、職員のフラストレーションを高める要因となります。
利用者の家族との関係
利用者の家族からの理不尽な要求やクレームも、介護職員にとって大きなストレスとなります。
家族の期待と現実のギャップ
家族が期待するサービスと、実際に提供できるサービスの間にギャップがある場合、職員は家族からの不満を受けやすくなります。
コミュニケーションの難しさ
家族とのコミュニケーションがうまくいかない場合、職員は精神的に追い詰められることがあります。
自分の介護観と施設の方針の不一致
介護職員の個人的な介護観
多くの介護職員は、自分の介護観や信念を持って仕事に取り組んでいます。
しかし、それが施設の方針と一致しないことがよくあります。
寄り添ったケアの提供
職員は、利用者に寄り添ったケアを提供したいと考えていますが、施設の方針が効率重視の場合、これが難しくなることがあります。
信念との葛藤
自分の信念に反する仕事を強いられることが、精神的なストレスを引き起こす原因となります。
方針の不一致が引き起こす問題
施設の方針と個々の職員の介護観が一致しない場合、以下のような問題が発生します
モチベーションの低下
自分の理想とするケアを提供できない場合、職員のモチベーションが低下します。
ストレスの増加
方針の不一致により、職員は仕事に対するフラストレーションを感じることが多くなり、これが長期的なストレスに繋がります。
介護職員のメンタルヘルスを守るための対策
職場の人間関係の改善
職場の人間関係を改善するためには、以下のような対策が有効です
オープンなコミュニケーション
職員間でオープンなコミュニケーションを促進し、問題が発生した際にはすぐに解決できる環境を整えることが重要です。
サポート体制の強化
メンタルヘルスに問題を抱える職員に対して、適切なサポートを提供することが必要です。
適切な評価と報酬の制度
介護職の努力を適切に評価するための制度を導入することで、職員のモチベーションを高めることができます。
成果に基づく評価
職員の努力や成果を数値化して評価する制度を導入することで、職員のモチベーションを向上させることができます。
報酬の改善
給料や報酬を適切に見直し、職員が努力に見合った報酬を受け取れるようにすることが重要です。
人手不足の解消
人手不足を解消するためには、以下のような対策が考えられます
採用活動の強化
新しい職員を積極的に採用し、現場の負担を軽減することが必要です。
労働条件の改善
労働条件を改善し、職員が長く働ける環境を整えることが重要です。
身体的負担の軽減
介護職員の身体的な負担を軽減するためには、以下のような対策が有効です
介護機器の導入
力仕事を軽減するための介護機器を導入し、職員の体力的な負担を減らすことができます。
夜勤の負担軽減
夜勤のシフトを見直し、職員の生活リズムが乱れないように配慮することが重要です。
コミュニケーションの改善
利用者やその家族とのコミュニケーションを改善するためには、以下のような対策が有効です
トレーニングの実施
職員に対して、認知症患者とのコミュニケーションやクレーム対応のトレーニングを実施することが重要です。
サポート体制の強化
利用者や家族との問題が発生した際に、職員がサポートを受けられる体制を整えることが必要です。
自分の介護観を尊重する環境
職員が自分の介護観を尊重し、仕事に取り組める環境を整えることが重要です
施設の方針の見直し
施設の方針を見直し、職員が自分の介護観を実現できるようにすることが必要です。
柔軟な対応
職員の個々のニーズに応じて、柔軟な対応を行うことが重要です。
まとめ|介護職のメンタルヘルス問題
介護職のメンタルヘルスに関する問題は、多くの要因が複雑に絡み合っており、個々の職員に大きな影響を与えています。
職場の人間関係、適切な評価、体力的な負担、人手不足、コミュニケーションの問題、介護観の不一致など、様々な要因がストレスを引き起こす原因となっています。
これらの問題に対処するためには、職場の環境を改善し、職員が働きやすい環境を整えることが重要です。
また、メンタルヘルスに問題を抱える職員に対しては、適切なサポートを提供し、彼らが健康に働き続けられるようにすることが求められます。