ハロー介護職
介護の仕事をしている上で「接遇」がテーマに上がった時、言葉遣いにおいて「敬語を使うと利用者との関係が固くなってしまうため、ある程度ため口や砕けた話し方も必要なのでは?」とカジュアルな言葉遣いを擁護する論調をしばしば耳にします。
果たして正解は…
記事の筆者であるハロー介護職の僕は、現役の介護士であり2児の父親でもあります。このポジションからはじき出された結論を、今回はお伝えできればと思います。
【記事監修者】
堀池和将
~経歴~
特別養護老人ホーム勤務(ユニットリーダー)
サービス付き高齢者住宅勤務(サービス提供責任者・訪問介護管理者・施設長)
~保有資格~
介護福祉士
結論:敬語を使うべき:タメ口は不要
まずは最初に高齢者介護において「敬語で話すべきか否か」
この問いについての答えですが、結論は「敬語で話すべき」です。
敬語を使うべきとされる一般的な3つの理由
教科書やインターネットなどで伝えられている、介護現場において敬語を使うべきとされている理由としては以下の3つが多いです。
一般的に避けた方が良いとされている4つの言葉遣い
反対にこういった言葉遣いは介護現場において不適切と一般的には言われています。自分の周りにはこういった職員さんはいませんか?
- ため口や馴れ馴れしい言葉遣い
- 高齢者を子供扱いするような言葉遣い
- 若者言葉や流行りの言葉遣い
- 命令口調
介護現場では「敬語」を使うことは大前提
こういった敬語を使うべき理由と避けるべき言葉遣いというものがあり、大前提として介護現場では敬語を使うことはマストと思った方が良さそうですね。
しかし、これで終わってしまってはこの記事の意味がなくなってしまうので、次は介護現場において「タメ口を使う必要がない理由」について解説していきます。
息子の担任教師の振る舞いから学ぶ接遇
私事の話なのですが、上の息子が今年小学生となり担任の先生の振る舞いと息子の関係から、学ぶことがあったためご紹介させて頂きます。
担任教師の言葉遣いへの違和感
息子の担任教師への生徒への言葉遣いへ僕は違和感を感じました。どういった言葉遣いをしていたのか?
まず生徒の名前を呼ぶ時は、男の子女の子関わらず「さん」付け。「~~くん」「~~ちゃん」とは絶対に呼ばないです。
また、話し方は必ず敬語。今年小学生になったばかりの若干6~7歳の子供に対して、子ども扱いするような言葉遣いはしません。タメ口なんてもっての外。
ボクの勉強不足なのか?最近の学校の先生はこんな感じなのでしょうか?それとも息子の担任教師だけでしょうか?そこは大した問題ではないのですが、何も知らないボクとしては違和感がありました。
担任教師と息子の関係は固くはならなかった
介護現場で繰り広げられる「敬語を使うと利用者との関係が固くなる」
この理屈を担任教師と息子の関係に置き換えると、二人の関係は固くなるはずです。では結果はどうなのか?
結果は正反対のものでした。息子は担任教師のことが大好きです。
家では担任教師のことを楽しそうに話をし、夏休みに新しい靴を買ったら「先生に見せるんだ!」と楽しみにし、「先生がこういったいたから僕はこうする」と親の言うことよりも影響を受ける始末。
二人の関係は固くなるどころか、結果は正反対になりました。
固くならない関係性を構築するためのキーワードは「敬意」
ではなぜ二人の関係は固くならなかったのか?この点について僕が担任教師の振る舞いを観察した結果、浮かび上がってきたキーワードは「敬意」でした。
担任教師の態度が表現する微妙な違い
担任教師は良くも悪くも息子のことを、1人の人間として扱っているのが観察している中でよく感じられました。
良い行いをすれば「認める」。悪いことをすれば「指摘」する。そして、感情的にならずに理路整然と物事を伝えます。
この「認める」「指摘」するという行為は関係がイーブンでないと成立しない行いだと思います。
関係に上下関係が生じるとどうなるか?
こうなります。
また、感情的にならない点も重要です。いい大人同士が接する場合、感情的にコミュニケーションは取らないものです。これを若干小学1年生相手に同じことを担任教師はしているのです。
担任教師の態度を形成する根底にあるものは生徒への「敬意」
なぜ担任教師は息子に対してこのような態度で接することができるのか?それは担任教師が息子に対して「敬意」を持っているからだと思います。
「敬意」というものは目に見えないものの、細かい所作や振る舞い、言葉遣いからにじみ出るものです。この「敬意」を担任教師から私は感じました。
「敬意」があればカジュアルな言葉遣いは不要
ここからは想像の話ですが、息子は「敬意」を持って1人の人間として担任教師から接せられることで、「尊厳」と「安心感」を守ってもらえているのだと考えています。
子供は「いつまでも子供でいたい」と思う反面「早く大人になりたい」とも思うもの。しかし、子供扱いされているうちは「大人になりたい」欲は満たされないんですよね。その点担任教師は1人の人間として接することで、子ども扱いせずにある意味大人として息子のことを扱っているのです。
この扱いから息子は、一人の人として守りたい「尊厳」を守ってもらえていると考えられます。
また、「敬意」を持って接するということは相手を騙そうとしたり、誤魔化そうとはしないものです。つまり「嘘」がありません。「嘘」がないことは「安心感」に繋がるでしょう。
担任教師と息子の良好な関係が築かれているのは必然
担任教師は特別生徒に媚びているわけではありません。それどころかさっぱりとしていて、必要以上に合わせようとしないところもあり、第一印象は「ドライな人」といった感じでした。
しかし、息子からすれば生きる上で大事な「尊厳」と「安心感」を与えてくれる担任教師は大事な存在なのでしょう。敏感な子供だからこそ大人の微妙な態度の違いに気づきやすい一面もあったかもしれません。
とにかく息子が担任教師を大好きになったのは必然であったと僕は考えています。
これらのことから関係性を築く上で大事になってくるのは「敬意」を持っているかどうかと言えます。
介護現場で重要なのは「言葉遣い」の前に「敬意」
ここで話は最初の「介護現場で敬語を使うと関係性が固くなる」に戻ってきますが、ここまで記事を読んで頂くと、相手との関係性を築く上で大事になってくるのは「敬意」を持っているかどうかということが分かって頂けるかと思います。
本質は「言葉遣い」ではなく「敬意」があるかどうか
ここで大事になってくるのは、介護現場において敬語を使っていれば問題はないという考え方は間違いだということです。関係性を構築する上で大事になってくる、相手への「敬意」がなければどんなに丁寧なことば遣いをしても相手には届きません。
反対に「敬意」を持ってすればタメ口を使っても問題はないとも言えます。
良い大人同士が接するのだから敬語を使うのは当然
しかしながら、「敬意」を持っていればタメ口でも問題ない、と言えるものの介護現場であれば利用者と介護者の関係である前に、良い大人同士の付き合いでもあります。
良い大人同士が接するのだから、接遇云々の前に敬語でお話するのが当然なのでは?というのが僕の結論です。
色々なことを書きましたが問題は至ってシンプルです。
「人と人」、「大人と大人」が接するのだから敬語は当たり前でしょう、ということです。
まとめ
介護現場で敬語を使うべき理由であったり、避けるべき言葉遣いという表面的なものは教科書やインターネットを調べればたくさん出てきますが、本質は相手への「敬意」を持てているかどうかです。「敬意」を持てていれば自ずと然るべき利用者への言葉遣いは表現されるし、失礼な言葉遣いはされないはずです。
接遇・言葉遣いに限った話ではないですが、介護をするうえで「本質」を理解することはとても大事です。上辺だけの知識や経験だけに頼ってしまうと大事なものを見失ってしまいます。
ということで「本質」は何か?を大事にしていきましょう。
参考にしてみてください。