介護職は非常にやりがいのある仕事ですが、同時に大きなプレッシャーや肉体的・精神的な負担を伴います。「もっと頑張らなければならない」「常に最善のケアを提供しなければならない」と思う介護士の方も多いのではないでしょうか。しかし、完璧を追求するあまり、心身ともに疲弊してしまうケースも少なくありません。
今回は、「60点のケア」を目指し、無理をせず長く介護の仕事を続けるための具体的なアドバイスを紹介します。
【記事監修者】
堀池和将
~経歴~
特別養護老人ホーム勤務(ユニットリーダー)
サービス付き高齢者住宅勤務(サービス提供責任者・訪問介護管理者・施設長)
~保有資格~
介護福祉士
介護現場の現実:突発的な事態に備えるための余裕
介護現場では予期せぬ出来事が日常茶飯事です。利用者の体調が急に悪くなったり、転倒や事故が発生したり、突発的なトラブルが起こることは珍しくありません。そうした状況において、冷静に対応するためには心身の余裕が必要です。
例えば、以下のような状況を想像してみてください。
- 利用者が突然の体調不良:朝は元気だったのに、急に食事を拒否し、体調を崩す。対応に時間がかかると、他の業務が滞り、焦りが生じる。
- 夜間のトラブル:夜勤中に突然の転倒事故が発生。応急処置や救急対応に追われる中で、次の業務への影響をどう抑えるかを考えなければならない。
- 予想外のケアニーズ:認知症の利用者が突然攻撃的な行動をとったり、混乱してしまう場合、介護士は冷静な判断と対応が求められる。
こうした予測不能な事態に備え、普段から「60点のケア」を目指すことで余力を持ち、冷静に対処できるようにしておくことが重要です。
「60点のケア」が意味するもの:質を保ちながらの持続可能な介護職の働き方
60点というのは「手を抜く」という意味ではありません。むしろ、限界まで頑張らずに心身のバランスを保ちながら、長く働き続けるための「プロフェッショナルな選択」です。
どうして60点で十分なのか?
質の高いケアは疲れない心身から生まれる
介護士自身が疲弊してしまうと、利用者に対する思いやりや注意力が低下し、結果としてケアの質が下がることがあります。60点を目指すことで、自分の限界を超えず、常に一定の質を保つことができます。
他職種との連携が重要
介護は介護士一人で成り立つものではありません。看護師やリハビリスタッフ、家族と連携しながら、チーム全体で利用者を支えるのが本来の形です。自分がすべてを背負う必要はありません。
専門職としての「手の抜き方」を知る
介護現場では、すべての作業に100%の力を注ぐ必要はありません。たとえば、日常生活のサポートで、利用者自身ができることはあえて手を貸さず、利用者の自立を促すことが、結果的に良いケアにつながる場合もあります。
自分を守るためのセルフケアの重要性
介護職は、心身ともに大きな負担がかかる職業です。特に夜勤や不規則なシフトで働いていると、睡眠不足やストレスが積み重なり、気づかぬうちに疲労が蓄積してしまうことがあります。そこで重要なのが、セルフケアの徹底です。
具体的なセルフケアの方法
適度な運動
運動はストレス解消や体力維持に非常に効果的です。特に、長時間の立ち仕事や力仕事が多い介護職では、筋力を維持することで怪我の予防にもつながります。
食事の管理
忙しい日々の中でも、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。特に、疲れやすいと感じる場合は、ビタミンやミネラルが不足している可能性があるので、意識して摂取するようにしましょう。
定期的な休息
休息を取ることに罪悪感を感じてはいけません。むしろ、疲れた状態で働き続けることが、最終的には利用者にも迷惑をかけることになります。しっかりと休み、リフレッシュすることが、良いケアを提供するための第一歩です。
チームで支え合う介護の重要性
介護職はチームで行う仕事です。自分一人で抱え込まず、他のスタッフや上司と協力しながら業務を進めることで、余裕を持って働くことができます。特に、精神的なサポートは重要です。辛いことや悩みがあれば、同僚や上司に相談し、共有することでストレスを軽減させましょう。
自分に合った働き方を見つけるための転職やキャリアアップの選択肢
もし、今の職場で「もう限界だ」と感じた場合、環境を変えることを検討するのも一つの選択肢です。介護業界は多くの求人があり、転職市場も活発です。働きやすい職場環境を見つけるために、積極的に情報を収集しましょう。
キャリアアップや転職のポイント
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まとめ
介護職において、「60点のケア」を目指すことは、持続可能な働き方をするために非常に重要です。無理をせず、余力を持ちながら働くことで、利用者にも質の高いケアを提供できるようになります。さらに、定期的に自分のキャリアや働き方を見直し、必要に応じて転職やキャリアアップを検討することも、介護職としての充実感を高める大切なステップです。